「うちは普通の農家だから、資産家じゃないし相続なんて関係ない」
そう思っている人ほど、実は「家族崩壊」の片道切符を手にしているかもしれません。 山形県民が抱える最大の弱点。それは、「分けられない財産(土地・家・田畑)」ばかり持っていることです。
法律の視点から、この「土地はあるけど金がない」状態がなぜ危険なのか、専門用語を使わずにその正体を暴きます。
1. 法律は「ケーキのように切れ」と言うけれど…
法律(民法)の世界には、「兄弟なら、みんな平等に分けなさい」という大原則があります。
- 法律の理想: 「お父さんの財産が3,000万円分あるなら、兄弟3人で1,000万円ずつね」
- 現実の壁: 「でも、その財産のほとんどが『家と田んぼ』です」
現金なら1円単位で分けられますが、土地はケーキのように包丁で切るわけにはいきません。無理に分筆(土地を登記簿上で分けること)すれば、狭すぎて家が建てられなくなったり、田んぼとしての価値がなくなったりします。
ここで「長男が家と田んぼを継ぐ」という昔ながらの形をとろうとすると、次男・三男からすれば「兄貴だけ数千万円もらって、俺たちはゼロ?」という不満が爆発します。これが争いの火種です。
2. 「土地の値段」には正解がない
プロ(不動産鑑定士)を呼んでも評価がバラバラ
法律の世界でも非常によくあるトラブルです。なぜなら、土地には「4つの値段」があるからです。
- 実勢価格(実際に売買される値段:一番高いことが多い)
- 公示価格(国が決める基準)
- 相続税評価額(税金計算用)
- 固定資産税評価額(毎年通知が来る値段:一番安いことが多い)
話し合いの際、土地をもらう側(長男)は「価値なんて低い(固定資産税評価額)」と言い張り、もらえない側(次男)は「もっと高く売れるはずだ(実勢価格)」と主張します。
全員が納得する「正解の金額」が存在しないため、いつまで経っても議論がかみ合わないのです。
3. 「代わりの現金」という、地獄の支払い
もし長男が「土地を全部もらう」と決めた場合、法律的には「他の兄弟の取り分を、自分のポケットマネー(現金)で払いなさい」という解決策がとられます。(これを専門用語で「代償分割」といいます)
しかし、ここで山形の「土地持ち・金なし」の呪縛が襲いかかります。
【絶望のシナリオ】
実家と田んぼで2,000万円の価値があるとされた。長男がそれを継ぐなら、弟に1,000万円の現金を渡さなければならない。
「そんな大金、俺の貯金にはないぞ…」
結果どうなるか?
弟への支払いのために、「先祖代々の土地を売って現金を作る」しか道がなくなるのです。「家を守るために継いだはずが、家を売ることになる」という皮肉な結末です。
対策:元気なうちにしか打てない「2つの布石」
「土地は切れない。でも、分けなきゃいけない。」
この矛盾を解決し、実家を守る方法は、親が元気なうちにしか打てません。
① 「生命保険」で現金を用意する
「代わりの現金(代償金)」がないなら、作ればいいのです。親が生命保険に入り、受取人を「家を継ぐ長男」にしておきます。
親が亡くなった時、長男にはまとまった現金(保険金)が入ります。それをそのまま弟への支払いに充てれば、長男の貯金を痛めず、弟も納得し、土地も守れます。
生命保険は非常に特殊な金融財産です。非課税枠もあり、相続においては非常に使い勝手が良いのですが、相続と保険、両方に深い知識と経験があるアドバイザーがほとんどいません。税理士がついでにやっていたり、相続をしらない保険募集人がにわか知識で誤った契約をしているケースが散見されます。ここについては別途記述します。
② 「遺言」で強制力を持たせる
「誰に何をあげるか」を遺言書で決めておけば、それが法律上の優先ルールになります。
「土地は長男。その代わり、私の預金はすべて次男に」と書いておけば、兄弟が顔を突き合わせて「評価額がどうだ」と揉める話し合い(遺産分割協議)そのものを省略できる可能性があります。
最後に
「うちは仲がいいから大丈夫」
そう言っていたご家族ほど、いざという時に「ボタンの掛け違い」で修復不可能になっています。
土地という「分けられない財産」を持っている以上、対策は必須です。
まずは「もし今、相続が起きたら、代わりの現金を払えるか?」をご家族でシミュレーションしてみてください。
「生命保険なんて入る金がない」という方へ。
第2話:実は「捨て金」じゃない?賢い保険の使い方が、相続の特効薬になる理由。

FPコンパスファイナンシャルプランナー
1981年2月生(うお座)/神奈川県出身/東京造形大学デザイン科卒
1男1女の父/趣味:ランニング(月200km)登山、料理、筋トレ、社会人サッカー所属
印刷会社でデザイナーとして11年勤務。その後ソニー生命で5年、生命保険を取扱う。
2018年妻の病(がん)をきっかけに山形へ。経済的・精神的不安定な時に、頼れるのは国の社会保障と自分の蓄え、そして人のつながりだと痛感。この経験を活かし、困ったときに頼れる、困らない「しくみ」と「保障」を提供し続けます。

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