こんにちは! FPコンパス伊藤伸哉です。
これまでの記事で、医療費の全体像、がん治療、先進医療についてお話ししてきました。今回は、多くの病気で直面する可能性のある「入院」と「手術」に焦点を当てて、具体的にどんな費用がかかり、どう備えれば良いのかを深掘りしていきます。
入院・手術にかかる費用、あなたはどこまで知っていますか?
「医療費は3割負担だから大丈夫」と思われがちですが、入院や手術となると、意外な出費がかさむことがあります。
- 治療費(3割負担・高額療養費で上限あり)
- 公的医療保険の適用で3割負担となり、高額療養費制度を使えば、ひと月の自己負担額には上限があります。これは安心材料ですね。
- 【要注意!】月をまたぐと負担増?
- しかし、入院が月をまたぐと、高額療養費の「月ごとの上限」がそれぞれの月に適用されるため、結果的に総額が高くなるケースがあります。
- また、一時的に病院窓口で高額な費用を立て替えることのないよう、「限度額適用認定証」の事前申請を忘れないでください。ほとんどの病院で案内がありますが、ご自身で確認し、手続きを進める意識が大切です。
- 食費(1日あたり1,470円が目安!)
- 盲点になりがちなのが「食費」です。入院中の食事代は、1食490円(2025年現在)が目安で、公的医療保険の適用外。つまり、1日あたり約1,470円が全額自己負担となります。
- 雑費・その他
- テレビカード代、売店での買い物、ご家族がお見舞いに来る際の交通費や駐車場代など、細々とした費用も積み重なります。
- 手術によっては、専用の下着や衣服の購入が必要になる場合もあります。
一番の要注意ポイント!「差額ベッド代(個室代)」
これが、入院費用の中で最も高額になりがちで、家計に大きな影響を与える可能性があります。
- 大部屋なら無料:相部屋で抵抗がない方や、病院側の都合で個室・2人部屋になった場合は、費用はかかりません。
- 個室を希望すると高額に:
- 長期入院の場合、プライバシーや安静を保つために個室を希望する方は多いです。特に女性の場合、異性との相部屋に抵抗を感じる方もいるでしょう。
- 個室代は病院によって大きく異なり、山形県内の病院を例にとると、1日あたり3,000円から36,300円と幅があります。
- 個室を希望するなら、1日10,000円~15,000円程度は必要だと考えておくべきでしょう。
入院中の「収入減少」も忘れてはいけない!
病気で入院すると、仕事ができなくなり、収入が減る可能性があります。
- 短期入院なら有給休暇で対応できることもありますが、長期入院となるとそうはいきません。
- 健康保険に加入している会社員の方なら**「傷病手当金」が利用できます。
- 最長1年6ヶ月間、給与の約3分の2が支給されます(非課税)。
- 例えば月収25万円(手取り約20万円)の場合、傷病手当金は約16.7万円。手取りの約8割が補償されるため、実質的な収入減は2割程度で済む計算です。
- しかし、自営業の方や専業主婦の方にはこの制度がないため、別途備えが必要です。
入院期間の短縮傾向と保険給付
近年、医療技術の進歩により、入院期間は全体的に短くなる傾向にあります。ただし、精神疾患や骨折などは比較的入院期間が長くなる傾向があります。
- もし「入院日数に応じて給付金が出る保険」に入っている場合、入院期間が短いと、受け取れる保険金が予想より少額になる可能性もあります。
- また、手術給付金も、入院を伴う手術と日帰り手術で給付倍率が大きく異なる保険もありますので、ご自身の保険内容を確認しておきましょう。
「入院・手術」への備えは、早めのシミュレーションから!
公的医療保険だけでは賄えない「盲点費用」や「収入減少」に、どう備えるかが重要です。ご自身の生活スタイルや、万が一の際の希望(個室希望など)を考え、具体的なシミュレーションをしてみることが、安心への第一歩です。
次回は、これまでの医療費の話を踏まえて、「公的医療保険だけでは足りない部分をどう補うか?」というテーマで、いよいよ具体的な「生命保険・医療保険」の選び方についてお話ししていきます。 お楽しみに!

FPコンパスファイナンシャルプランナー
1981年2月生(うお座)/神奈川県出身/東京造形大学デザイン科卒
1男1女の父/趣味:ランニング(月200km)登山、料理、筋トレ、社会人サッカー所属
印刷会社でデザイナーとして11年勤務。その後ソニー生命で5年、生命保険を取扱う。
2018年妻の病(がん)をきっかけに山形へ。経済的・精神的不安定な時に、頼れるのは国の社会保障と自分の蓄え、そして人のつながりだと痛感。この経験を活かし、困ったときに頼れる、困らない「しくみ」と「保障」を提供し続けます。
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